オフィスビルの鍵開け

午前７時を少し回った頃、１本の電話が入りました。50代後半と思われる男性からで、オフィスの鍵を紛失しまったとのことで、開錠のご依頼でした。伺った静岡市のご住所に伺うと、オフィスビルの３階の一角、入口の前で心細そうにお客様がお待ちでした。お話を伺うと、この会社の社長で、午前中に提出しなければならない書類の作成があることを思い出し、早めに出社、入口のドアを開けようとしたところ、鍵が無いことに気付かれたそうです。ご自宅に忘れた可能性もあったのでしょうが、ご家族は昨日から泊りがけで出掛けれているそうで、確認のしようがありません。ご自分で帰宅するにしても、お住まいが静岡市の郊外ということで始業時間に間に合いません。もう１本の鍵を持っている部長が出張中で、このままでは社員がオフィスに入ることができないことから、慌ててお電話をされたということでした。
　時計を見ると、残された時間は50分というところでしょう。問題は、今まで経験したことのないメーカーの鍵だったことです。しかし、悩んでいる時間はありません。まずは基本のピッキングしかないと思い、作業に取り掛かりました。予想が付かない作業でしたが、根気強くピッキングを続けていると、作業開始から30分くらい経った頃、手ごたえを感じ、カチッという音が聞こえました。開錠に成功したようです。社長にドアノブを回し、扉が開くのを確認していただくと、気が抜けたような感じでした。帰り際、開錠したばかりのドアを開け、オフィスに入っていく男性社員を見かけました。社長もホッとしながら、急いで書類の作成を進められていることでしょう。後日、社長からお電話をいただき、鍵は静岡市郊外のご自宅の書斎の本棚にあったようで、改めてお礼の言葉をいただきました。